2008年03月26日

死生観

ずいぶん昔のことですが、日本人と中国人の死生観の違いを思い知らされたことがあります。
私が学生の頃、飛行場にハイジャックされて停まっていた機内に軍隊が突入し、人質が何人か殺されたという事件があったのです。
(私は西ドイツ=当時=と記憶していましたが、今調べてみると、場所はウガンダで、突入したのも機内でなくターミナルビル、突入したのはイスラエル特殊部隊のようです)
中国人留学生を交えた場でこの話題が出たとき、日本人学生はすべて「軍隊の突入は乱暴すぎる。まずは人質の安全を考えて慎重に対処するべきだ」という考えで一致していました。
でも何人かいた中国人留学生は、「突入は当然だ。テロリスト相手に生ぬるいことをするべきではない。人質が死んだのは気の毒だがやむを得ない」という意見。
中でも日本語が流暢なH君が目をぎょろつかせながら「中国人はみんなそう言うはずだ」と断言したものです。

大義の前には人権が消し飛ぶ。
チベットの騒乱を力ずくで封じ込める中国政府のやり方に、またかと天安門事件を思い出し、人間の尊厳なんてものはこの国にはないんだなあと改めて思ったことでした。
いったい何人のチベット人が殺され、濡れ衣を着せられて処刑され、便乗して財産を没収されるのか、真相は永久に藪の中でしょう。
かつてリチャード・ギアが懸念した事態が現実のものとなりました。
http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2006/07/ny_0477.html
こういう記事もあります。昨年夏から不穏な状況が伝えられていました。
中国による懐柔策は失敗 チベット民衆なびかずhttp://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/china/104672/
中国政府はダライ・ラマのインド亡命以来、チベット民衆に対して厳しい思想統制を敷き、僧侶を中心にダライ・ラマを否定する思想教育を強化してきた。その一方で、膨大な経済支援を投入するなど“アメとムチ”を使い分け、チベット民衆の懐柔に努めてきた。
 しかし、チベット亡命政府によると、毎年2000人ものチベット民衆が自らの生命を懸けて、同自治区などから国外に脱出し続けている。また、中国当局の厳しい監視下にもかかわらず、ダライ・ラマを慕う民衆の活動は活発化しており、暴動やデモなどもしばしば伝えられる状態だ。(昨年11月)


青海チベット鉄道(青蔵鉄路)の開通で、今までは秘境だったチベットに観光客や参拝客とともに漢民族の文化の押し付けが迫ったわけですね。
チベットは富士山の山頂並みに標高の高いところで、ゆっくり動かないと高山病に苦しむことになるそうです。そういう地域で信仰を生き甲斐に質素に暮らして来た人たちが、たまりかねて反乱を起こしても数を頼みにたちまち制圧される。
フランスは北京オリンピックの開会式ボイコットをちらつかせている(リチャード・ギアも呼びかけている)ようですが、チベット政策がそんなものに左右されることはないでしょう。

知り合いに薦められて、「脳死・臓器移植の本当の話」(小松美彦・PHP新書)という本を読んでいます。
その中に鳥肌が立ちそうな話がありました。
脳死患者(ドナー)からいざ臓器を取り出そうとメスを入れた瞬間、「脈拍と血圧が急上昇して」「動き出し、のたうち回る」から看護師は動転する。かくて、移植医はドナーに「麻酔」をすることを求め、アメリカではモルヒネの使用が普通のこととなっている、というのです。(89〜90P)
それで思い出したニュースがあります。
2006年7月26日 のニュースで現在は消えていますが、検索すると詳細が書かれたサイトがありました。
http://www.lifestudies.org/jp/ishokuho.htm#11
脳死:米国・カナダで判定の3人、日本帰国後に意識回復 (毎日新聞 2006年7月26日15時00分)

 米国やカナダ滞在中に脳血管の病気で意識不明になった日本人で、家族らが現地の医師から「脳死」と説明されたにもかかわらず、帰国後に意識を回復した人が3人いたことが中堅損害保険会社の調査で明らかになった。東京都内で開かれた日本渡航医学会で、損保の担当者が報告した。海外での脳死診断は日本ほど厳格でなく、治療を打ち切る場合があることを浮き彫りにする事例で、報告した担当者は「医療文化が違う国にいることをはっきり認識すべきだ」と警告する。

報告によると、02〜05年度に、旅行や仕事で米国、カナダに滞在中の旅行保険契約者9人が脳血管障害で入院。主治医は家族や損保の現地スタッフに「脳死」と説明した。うち3人の家族は「治療中止は納得できない」などと訴え、チャーター機で帰国。日本で治療を受け、意識が回復した。搬送費用の約2000万円は保険で支払われた。残り6人は、チャーター機手配に必要な額の保険に加入していなかったことなどから帰国を断念。現地で死亡したという。

 意識が戻った60代男性の場合、カナダで脳梗塞(こうそく)となり、入院した。人工呼吸器をつけなくても呼吸できる自発呼吸はあったが、医師は家族に「脳死」と説明したという。しかし、男性は帰国後1カ月で意識が戻り、記憶も回復した。 
 …日本医科大の横田裕行助教授(救命救急医学)は「海外の基準でも脳死なら意識は回復しない。米やカナダなどの一般医療現場では、回復は難しいなどの意味で脳死を使うことがある」と言う。


アメリカやカナダでは簡単に「脳死」ということになるみたいですね。
こちらの国とも死生観にかなりの違いがあるように思えます。どうせ間もなく死ぬ運命なら臓器を提供してよ、と言われても(合理的な考え方なのかもしれませんが)、一般的な日本人の死生観では簡単に応じられないだろうと思います。
上の本に、ハワイで交通事故に遭った24歳の女性の話が載っていました(392P)。
脳死ではないけど瞳孔は両眼とも拡大、重大な脳傷害で深昏睡状態。
家族は、「お嬢さん一人で20人の命が助かる」と多臓器の提供を求められたそうです。応じていれば「脳死」として処理されたのでしょう。若いからオイシイ臓器だったかもしれません。
母親はショックを受けながらも、「20人助けられるのなら娘の一人助からないわけがない」と気を取り直して要求を突っぱね、治療の継続を要求。彼女は助かり、今は社会復帰まで果たしているそうです。

上の本にもありましたが、日本から移植のためにアメリカに渡る子どもがよく話題になります。(募金活動とか)
日本では15歳以下の臓器移植提供が出来ないから海外に行くわけですが、その子たちに臓器を提供した海外の子どもたちは、きちんとした基準で脳死判定されているのか、ブローカーが介在していないか、気になります。


posted by dashi at 23:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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