2008年03月15日

そっ啄同時

きょうは天皇家のお姫様が幼稚園を卒業したそうですが、世間はまさにそういう季節ですね。
ウチの息子が月に一度通っている訓練会でも、卒業生を送るお別れ会がありました。
訓練会は幼児・学齢期を対象とした組織なので、高等部卒業までで会員を卒業することになっています。
息子は2年前(高等部卒業時)に卒業を祝ってもらい、記念品もいただきました。現在はOBの立場でリトミックの日だけ参加しています。
今年は卒業生が3人でした。みんな息子とは別の学校なので息子より2歳下ですが、春からは共に社会人です。

卒業するのは子どもたちばかりではなくて、ボランティアで参加してくれていた学生さんも一緒です。大学のボランティアサークルから代々来てくれていますが、今年は4年生が4人卒業でした。
障害児の相手をしてくれるのだからみなさん優しくて忍耐強い、元気な学生さんたち。
障害児の中には知的に軽い人懐っこい子もいますが、どちらかというと一緒に参加しているきょうだい児の遊び(話し)相手として貴重な存在です。
きょうだい児のフォローというのは(親には手が回らないけれど)とても大切なこと、この会で救われてきたきょうだい児も多かっただろうと私としては思っています。

ボランティアの学生さんたちが、卒業する子どもたちに色紙を贈ってくれました。
訓練会はOBだけど学校を今年卒業するウチの息子の分もあり、笑顔で手渡されました。
トトロのイラストを囲んで寄せ書きが配置された、とても可愛い色紙です。
いつもはこういうものにあまり関心を示さない息子ですが、今回は違いました。色紙にこめられた温かい愛情が伝わり、自分に贈られたものとわかったよう。無表情ながらじっと眺めたり、大事そうに持ったりしています。
家に帰ってからは自分の部屋に持ち込んで「観賞」しているようです。

例えば「寒いから、それでは風邪を引くから」と服を着せようとする。
爪を切っている時尖った部分が出来て「これでは引っかいて怪我をするから」ヤスリをかけようとする。
塩分の摂りすぎになるから、ドレッシングや塩コショウを控えさせようともします。
こちらは息子によかれと思ってするのですがわかってくれず、激しく拒否される度に裏切られたような気分になる。
これは喜ぶだろうと奮発して買ったもの(天空の城ラピュタのDVDとか)も、一度見たらあとは頑として受け付けない。がっかり。
心が通い合うというのは期待する方が間違っている、と今はもう諦めが先に立つことが多いです。だからきょうの反応はとても嬉しく思いました。
息子も人の愛情が受け止められるほどに成長したのかもしれません。

親がいくら一生懸命になったところで、時期がこないと子どもは反応を示さない(反発はする)。受け入れる準備が整ったところに働きかけがあって初めて、すんなりと意思が通う。
ちょうど、こういう状態を形容するぴったりの言葉を聞きました。そつ(口篇に卒)啄同時(そったくどうじ)、というのです。
もともとは禅宗の用語で、師家(しけ)と弟子のはたらきが合致すること、と広辞苑にあります。
今まさに悟りを得ようとしている弟子と、 それを導く師家の教えが絶妙に呼応することを指す言葉のようです。絶妙に呼応する、というのはめったにあることではないでしょうね。

一般に使われるのは、それから発展した「逃したらまたと得がたいよい時機」の方でしょう。
口+卒(そつ)は、孵化直前の雛が卵の中から殻をコツコツつつくことで、啄(たく)は親鳥がそれに応えて外側から殻を突き破ること。(啄木はキツツキのことですから、啄の方はわかりやすいですね)
雛がつついているのに気づかないでいると雛は死んでしまう。親が破るのが早すぎても雛は死んでしまう。内側と外側から同時に呼応して突き破って、初めて雛が誕生する。そういうことを表す言葉だそうです。
(親がつつかなくても出てこれる雛もいるんじゃないかと思いますが…。孵卵器で生まれるヒヨコは殻が柔らかいのかもしれませんね)

タイミングを見計らう能力が、(特に障害児の)親や教育者に最も求められる資質かもしれません。


posted by dashi at 23:42| Comment(6) | TrackBack(0) | 自閉症関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
dashiさん、こんにちは。卒業の寄せ書き、いいお話ですね。
子供の発達というのは多かれ少なかれ個人差があって、その子に合わせて見極めるというのは親の技でもありますね。いや、大人も同じことなのかもしれません。

日本に戻る際のことを考えて調べているうちに、dashiさんの地域で自閉症で有名なクリニックの情報をちょっと伺いました。・・・初診料が20万円とか。きっと名前を書かなくてもdashiさんはご存知かと思うのですが、評判はいかがでしょうか。その値段の内訳と、それでも予約が一杯ということに興味が沸きました。最初の診断というのがその後の支援を受けるのにそれだけ大切ということなんでしょうか・・・?
Posted by Kashin at 2008年03月16日 06:24
コメントありがとうござます、ホントに大人でもそうで、私も今ごろになって「知るを楽しむ」状態です。これを学生時代にやっておけばなあ、と後悔して、娘たちにあれこれ言ってもうるさがられるだけ^^。

さてその「初診20万のところ」って、はい、どこかわかります。実際に受けた人も何人か知っています。ウチはビンボーだし必要を感じなかったので行った事はないですが。
受けた人は「専門の先生(複数?)がつきっきりで2日がかりで(だったと思いますが?)診察・検査してくれるのだから、20万は高くない、と主人が言った」と話していました。
この子がなんとかなる(かもしれない)ならカネはいくらでも…という親は少なくないと思います。実際、申し込んでも2年だか待たされるくらい、人気があるそうです。
強力なコネがあると早くなりそうですけどね。

保険がきかず自費となるとなんでも高いですからね。余談ですが、アメリカに行っていた友人が歯医者にかかったらちょっとした虫歯に10万で、ご主人に怒られたって言ってました。

最初の診断がその後の療育にどれだけ影響するかは、いろんな意見があると思います。
私個人としては、初診よりも初期の療育(小学低学年まで)がとーーっても重要だと考えています。
この子は自閉症で、こんなこだわりがあります、こうすればラクです、とわかったところで、その子はその状態のまま固まるわけじゃない。
初診のときの子どもはその時点のその子で、一年後、5年後のその子とは別人のようになってる可能性もある。
行き過ぎた配慮で可塑性を後退させる、そんな危険性も無きにしも非ずではないかと考えます。
ただ、いったいこの子はナンなんだ、と混乱している親を現実に向きあわせることが出来るなら、高くはないかもしれません。

「『自閉症で稼ぐなよ!』と思う」、と吐き捨てた友人もいましたが、受けたくても20万ポンと出せない人にとっては、そう言いたくもなるだろうな、と思いました。
私はそのクリニックとは無縁ですが、自閉症関係がとても進んだ地域に住んでいる恩恵にあずかって、助かっています。
Posted by dashi at 2008年03月16日 13:15
dashiさん、とても有用な情報ありがとうございます。そう!きっとそのクリニックです・・・。

そう、dashiさんの地域は、日本でトップクラスに自閉症関係のサポートが進んでいますよね。逆に言えば、サポートが受けられる受け皿があれば、最初にきちんと診断してもらう価値もあるのかもしれないですね。でも、20万・・・。外の人の医療従事者研修も、一日1万で受けているそうです。
もっとこういう施設が増えれば競争もあるだろうけど、施設が絶対的に足りないのでしょうね。

こちらでは、言葉は悪いですが、自閉症で必要以上に稼いでいる人が居ると思います。栄養療法、キレーション、微量元素のテスト・・・。反対はしないけど、儲けたお金で公平な研究をして還元するなりして欲しいものです。
Posted by Kashin at 2008年03月16日 22:36
今まで存じ上げませんでしたが、こういう重い背景を背負っておられたのですね。身の引き締まる思いで拝読しました。
Posted by 湖の騎士 at 2008年03月19日 21:37
>Kashinさま
5月に一箇所、クリニックがオープンするようです。院長は自閉症関係に明るい方で、精神科と小児科を掲げてあるので、たぶん発達障害相談がメインになるんじゃないかと私としては思っています。
絶対的に供給が足りないのははっきりしているので、これからこういうところは増えるかも、ですね(競争というか切磋琢磨も?)。週末も診療があるようです、需要が高いのでしょう。

コメントありがとうございました。
Posted by dashi at 2008年03月19日 23:28
>湖の騎士さま
イエイエ、重い背景と言うとホンモノの苦労している方に申し訳ないです。最重度の知的障害(自閉症)ですが、発作もないしそう難しい子ではないので…。
小学部からずっと通った養護学校の、きょうは卒業式でした。先日授業終了のことを書いたのも、14年通った挙句の卒業、ということで感慨深いものがあったのですが、舌足らずな文章で中途半端でしたね。
卒業式は感動的で、拾ったネタもありますが、きょうはくたびれたのでまた明日にでも書きたいと思います。

コメントありがとうございました。
Posted by dashi at 2008年03月19日 23:39
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