2007年11月22日

Kさんのこと


きょうは息子の学校で創立40周年を祝う会が開かれ、出席して、昼食にはお赤飯をいただいてきました。
最初は戦中戦後の混乱の中、教会の奉仕活動の延長でしょうか、身寄りのない子どもたちを引き取る施設として始まりました。
そこから当時は学ぶような場もない(就学猶予で義務教育からはじかれた)障害のある子どもたちの学校が作られたそうです。
初めは小学部だけの小さな学校で、養護学校義務化で公立の学校が設置された時には、転校する子が続出して、深刻な経営危機に陥ったこともあるそうです。
公立の学校は学費が要らないし、自宅に近い方がラクだからでしょうか。新築で職員も多い大きな校舎に惹かれた親もいたかもしれません。
今でこそ息子の学校も校舎を新築してきれいになっています(金八先生のロケにも使われました)が、ウチの子が入学した14年前には床のささくれが気になるようなオンボロ校舎でした。

40年のあゆみを記念して、年に一度発行される機関紙をまとめて冊子にしたものが配られました。33年分あるそうです。
この機関紙には、毎年二人ぐらいの保護者が依頼を受けて文章を寄せます。
その中に私が2002年に書いたものもあり、久しぶりに読み返しました。わりと気に入っている話なので、手前味噌で恐縮ですが、ここに再掲させていただきます。

<Kさんのこと>
訓練会OBのお母さんたちが(子どもはみな成人)おしゃべりしていました(私はそばで聞いていました)。
「きのうスーパーに、ちっちゃいダウンちゃんを連れたお母さんがいたの。とっても可愛くてさー、声をかけたかったんだけど」
「かけたらよかったのにー」
「そうよ、お母さん、喜んだと思うわよオ」
口々に言っている中でぽつりとひとこと、
「かわいそうだね。これから地獄が始まるんだね」。
溜め息まじりのつぶやきに、みな絶句。やっと一人が
「べつに、地獄とは思わないけど」
と力なく言うのが精一杯でした。
この「事件」で私は故郷の友人Kさんを思い出しました。
Kさんに出会ったとき、私たちの子どもは同じ自閉症の4歳児。母子で地元の通園施設に通っていました。
Kさんは私より一回り若く、一人っ子のTくんを溺愛と言ってもいいくらいに可愛がっていました。
初めての障害児に悩まされていた私には、
「知恵遅れでも自閉症でも何でも、ちっともかまわない。Tが笑ってくれるだけで最高に幸せ」
と屈託のないKさんが、むしろ不思議に思えました。
あるとき、亡くなったKさんのお父さんの話を聞いて、なるほどと納得したのです。
大工の棟梁だったKさんのお父さんは、とても子煩悩な人だったようです。
Kさんはけっこう遅くまでおねしょをしていて、嘆かれたり叱られたりで悲しい思いをしたそうです。そんなとき、Kさんのお父さんは、
「Kの小便はちっとも臭くない。いい匂いがする」
と言って、干したおねしょ布団にほおずりをしてみせてくれたそうです。Kさんの深い愛情は親譲りというわけです。
Kさんはその後、Tくんが国立大学付属の養護学校に入学できてから、二人の子を産みました。上京の折に会ったら、幼い弟妹が「Tにいちゃん」の横で明るく笑っていました。
障害なんか関係なくTは可愛いと言い切るKさんと、地獄というあのOBさんと。
未来は大きく変わってしまうだろうと考えさせられたことでした。


字数の関係で書けなかったのですが、Kさんに関してはこんなエピソードもあります。
障害児の親が集まった席で、親にとっては知的障害と身体障害(ほとんど一人では動けないくらいの)のどっちがラクか、という話になりました。
本人にとっては、悩まなくていい分(悩めるほど軽くない前提)知的障害の方が幸せだろうと意見が一致しましたが、親にとっては、の方は意見が分かれました。
意思疎通が出来るのはいいとしても、本人が悩んでいるのを見るのは辛いものがあるだろう、という意見ももっともです。
Kさんの考えはこうでした。
「動けなかったら地震や火事のとき逃げられない。周りに人がいなくなったら、餓死するしかない。そんなのカワイソウだから、知的障害の方がいい。おなかがすいたら、人のものを奪ってでも食べてほしい。行きたいところに行き、したいことをしてほしい」
ここまで子どもを愛して子ども本位の考え方をするんだ…と感動したことを忘れられません。
Kさんの子に産まれてTくんは幸せだったな、と思っています。


posted by dashi at 22:38| Comment(4) | TrackBack(1) | 自閉症関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして☆
うちのかずくんも自閉症です。
昨日はじめててんかんの発作をおこし、
そのことを色々検索していたら、
dashiさんのブログに
たどり着きました。
また寄らせて頂きます☆
Posted by ひとみ at 2007年11月23日 14:51
いらっしゃいませ、コメントありがとうございます。
ご心配ですね。一度発作を起こすと合う薬を探すのが大変らしいですね。血液検査もセットとなるし。
でも、主治医があるとあとでいいこともありますよ(診断書などが必要になるから)。

ウチの子はまだてんかん発作を起こしてないので、そっちの苦労からは解放されています。20代半ばにもう一つピークがあるそうなので、油断はしないでいるつもりです。
長い付き合いだから、頑張りすぎないでやっていきましょう。
Posted by dashi at 2007年11月24日 12:08
これも、いいお話ですね。

でも、障害のある子はある子なりの苦労、ない子にはまた別の苦労があるから、
子供産んじゃったらどっちにしろ地獄、
なのかな??わたしは、地獄系の発言の人には近づきたくないです。せっかくの時間の無駄だし こっちまでめいってしまう。そういう人は、障害児がいなくても、何かと不満を探す人なんだと思わないと こっちまでつらくなります。

私のいとこは、身体が不自由で、「なんで俺を生んだんだ!」といっていました。思春期だったからこそと思いますが、今は、穏やかに幸せを感じて居たらいいけれど、、、。(親たちの事情があって付き合いがありません)

Kさん、おとうさま、の子どもを愛する能力、というのも、生まれ持ったものでもあり、習得する技術でもあるのかもしれませんね。みならおう。 
Posted by mm at 2007年11月27日 17:46
地獄系。数は少ないけど、障害児の親にもいますね、こんなタイプ。こういう人は、健常児が70点の答案を持ってきたら「30点もまちがえたのね」と言うのかも^^。
みんなに敬遠されて孤立して、キッチンドリンカーになったりね。人生には限りがあって一回きりなんだってこと、ちゃんと考えてほしいですね。
本人が後ろ向きなのも困ります。
身体障害の妹に「おねえちゃんは歩けていいね」といつもひがまれて困っているという話を聞いたことありますよ。世話するのもイヤになるでしょうねえ。
コメントありがとうございました。
Posted by dashi at 2007年11月27日 21:14
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