2007年11月04日

売られた喧嘩

きょう、息子と散歩に出て、行きは電車だったけど帰りはルートを変えて一駅分歩き、路線バスに乗ることにしました。
自閉症の息子は決まったルートを好みがちですが、散歩のときはあまり固執しませんし(するときもあります)、なるべくさせないように心がけてもいます。
始発から終点まで20〜30分ばかり乗ります。ウチの最寄り駅まで一本で帰れるので、私たちにとっては便利なルートです。
車ではよく走る道ですが、運転中にはよそ見もできないし、高い位置に視点があるので見慣れた場所でも違って見え、ミニ旅行気分にも浸れます。

あまり利用する人のない路線なので、昼間は一時間に1、2本しかありません。
バスターミナルに着いて時刻表を見たら、発車までに30分もありました。そばのスーパーに寄ってお茶などを買って戻っても、まだ20分以上あります。
電車を乗り継いで帰ることも出来ますが、息子の機嫌もいいし、のんびり待つことにしました。
利用者が何人か並んでいましたが、乗り口に近いベンチには空席がいくつもあります。
その乗り場からは3つの路線が発着していて、私の乗る予定以外はバス便しかない、比較的利用者の多いルートです。並んでいる人は私とは別の線だろうと思われました。
空席があるのに何も20分も立って待つことはないと思い、空いたベンチに息子と二人腰を下ろしました。

「割り込みだ!」
大きな声が飛んできました。驚いてそっちを見ると、白髪まじりの頭をした小柄な女性がこっちをにらんでいます。
私の左隣に息子、その向こうに70代ぐらいの男性、空席がひとつあって一番奥(端っこ)に件の女性が座っています。
割り込むつもりはない、みんなのあとから乗ればいいだろう。疲れているし、席が空いているから座っただけで、いけないことではないだろう、というようなことをなるべく穏やかに説明したつもりです。
こちらには、座っていれば息子も落ち着いて待っていられる、という事情もありました。
ところが私がひとこと言うと、相手は大きな声で何倍も言い返してきます。訛りもない、はっきりとした口跡です。

私はからんだりからまれたりというのは、あまり経験がありません。きょうだいゲンカでも私は年が離れた一番下なので、だいたい言われっぱなし。鍛えられていないので鈍く、たまに舌戦をしても丁々発止ができません。
揚げ足を取るような物言いをされると、冷静に言い返せずついカッとなってしまいます。
途中で、相手は知的障害者だと気がつきました。論旨が滅茶苦茶です。
滑舌がいいというのか、口が達者で、なんだかんだと罵ってきます。罵る言葉ばかりをどうしてこれほどに溜め込んでいるのかとますます腹が立ちました。
(知的障害者は)「いっそ何もしゃべらない方が可愛がられる」というのは、こういうことを指しているのだと納得できました。

左隣の男性が、立ち上がって乗り口の方に移動しました。
みんなが(彼女を避けるように)離れた場所に並んでいたのは、私の来る前にも何かひともんちゃくあったのかもしれません。
相手にするな、とそっと忠告してくれた人がいて、とても恥ずかしくなりました。
相手が喧嘩を売るのが趣味なら、こちらはそれを買わなければいいだけの話。むきになって声を荒げた私は(怒ると言葉に詰まる方ですが…)、娘が一緒だったら制止されていたに違いありません。
いいトシしてほんとうに恥ずかしい。
黙り込んだ私に、割り込みを非難する言葉から、お門違いの説教になり、おとなしくしている息子(障害児とわかったのでしょう)や私を中傷する言葉が延々と続きました。まあその憎たらしいのなんの。

それだけしゃべれる知性を、別の方に使ってほしいものだと思いました。
我慢して無視している私に再三、「聞いてんの?」と尖った声が投げつけられます。
「どこそこではこんなんじゃすまないよ、怖いよ。アタシはこの前殴られたんだから」
別の駅では殴られたらしいですが、さもありなんと思いました。
その場を立ち去る選択肢もありましたが、長く歩いて疲れてもいたので、そのまま耐えました。
二台違う行き先のバスが来て、人が去りました。私の見込みどおり、並んでいた人はみんな乗ったようです。
(心配して?)先に乗るように促してくれた人もいました。
右隣にいた女の子に「うるさくしてごめんなさいね」と謝ったら、「大丈夫です」とにっこりしてくれました。

なんとその女性は私と同じバスに乗りました。
私より前から待っていたわけだから、最低でも20分以上。待ちかねたようにさっさと乗って中央あたりに掛けました。
うんざりだったけど仕方ありません。あとから来た人たちが乗り込んでから一番最後に乗り、がらがらだったので奥に座りました。
バスの中でまでは続かなかったのでやれやれでしたが、途中で彼女が降りるまでは気が休まりませんでした。
「割り込みはいけない」のは確か。この場合はそうではない、と幅のある思考が出来ないのは自閉症なのかもしれません。そうだとすると彼女は「喧嘩を売った」つもりはないのでしょうが、こちらとしてはそうとしか思えませんでした。

彼女はたぶん、喧嘩を売る形でしか人と関わりを持てない孤独な女性なのでしょう。怒って相手をしてくれれば、寂しさが紛れるのかもしれません。
おそらく相手が黙り込み無視する形で決着するのが大半でしょうから、言い負かしたのと同じこと。ゆがんだ形の達成感を得て満足しているのかもしれません。
相手が男なら殴られることもあるでしょう。殴りそうにない相手を選ぶのか、殴られてもいいから相手をしてほしいのかもしれません。
私が広い心の持ち主だったら、その寂しさを切なく思い、彼女に優しくしてあげられたのかどうか…。
全く大人げない対応をしてしまった、と自己嫌悪に陥り、すっかり落ち込んでしまいました。気晴らしに娘が借りてきた「ダイ・ハード」を見てもスカッとしないでいます。…もう寝よう。



posted by dashi at 23:46| Comment(3) | TrackBack(0) | 自閉症関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私は…dashiさんの肩こりが心配ですよ…

ちなみに素早くタイピングするコツは、
肩の力を抜くことだそうです。
んでもって「早く打つ」のではなく、
「多少遅くても間違わずに打つ」だそうです。

タクシーに御乗車中のお客様にも、
ノートパソコン砕けよ!とばかりの勢いで
タイピングする方がいらっしゃるのですが、
何かに取りつかれているように見えるのは私だけでしょうか?
因みにバックスペースキーの文字は消えていました。(どういう意味か分かりますよね?)


タイピングが早くても、タイプミスが多いタイプの non-key でした。
またおじゃまします〜
Posted by non-key at 2007年11月05日 04:25
コメントありがとうございます、なぜか反映されないでいましたね。seesaaブログの不具合でしょうか…。

どういう意味かよくわからないんですが…ワルクチを打っては消している、ということですか? 出すわけにはいかないメールとか?
「てめー、よくもしゃあしゃあと他人事みたいに。さっさと辞めてしまえ! お前なんかくびじゃあ!!」と打ちたいだろうなあ、民主党の議員さんたち^^。
Posted by dashi at 2007年11月06日 23:12
あはは…さすがに入力中文章の内容までは分からなかったのですが、
バックスペースキーのトップに刻印されている
[BackSpace]の文字が、
あまりにもそのキーが沢山打鍵されたために擦り減ってしまい、
刻印が消えているのです…
つまり訂正や入力しなおしが多いってことです。
他のキーはそんなこと無いのにねぇ。
「しまったぁ〜!」なんて思いながら[BackSpace]キーを叩くときには、
思わず力が入ってしまうのかもしれません。

ってことで、ではまた〜
Posted by non-key at 2007年11月08日 05:55
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