2007年09月22日

殺される子

幼い子どもを道連れに無理心中を図った、というニュースに接する度に、「障害児かしら」と考えてしまう私ですが、たぶんそう的外れではないと思います。
夫の暴力とか不倫とか、人生に絶望するようなことがあったとしても、一緒に死のうとまで思い詰めるのはよくよくのことではないでしょうか。まだ子どもが小さいなら母親も若いはずだし、同情して助言したり助けてくれる人もいると思います。
周りにわかってくれる人が居ない、未来は出口のない真っ暗なトンネルとしか思えない、深い絶望の中で死を選ぶのでしょう(実際にはなかなか死ぬことは出来ないようで、生き残る親も多いですね)。子どもを残して行けないのは、子ども自身にその原因があるからだと思います。

有名な大学病院で小児科医として働いていた人が、生まれた子がダウン症だったとき「迎えに来ない親もいる」と話していました。(ダウンちゃんは心臓に奇形があることが多いと聞きますが)手術をしないと助からないとわかっていて、手術を断る親も珍しくないそうです。
赤ちゃんポストに入れられたダウンちゃんもいたようですね。(幸いあとで迎えに来たそうです)
警察が介入することなく、闇に葬られた障害児も少なくないでしょう。
自閉症の場合は生まれてすぐにはわからないので、殺されるとしたら多動で走り回る(親をふりまわす)ようになったあとでしょうか。
事件になっても自閉症であることが明らかにされることは少ないと思いますが、きょう、珍しく二人の「自閉症」を苦にした殺人の報道を見つけました。

事件自体は昨年、二人の子どもを殺して自分は死に切れなかった母親が、殺人の罪に問われたものです。
この事件のニュースを聞いたとき、私は例によって「どっちかが障害児か? 自閉症では?」と思いましたが、そういう報道はなかったように記憶しています。
二人とも自閉症の子だったようですね。
これは地裁で被告が述べたことを報じる7月のニュースですが、広島の事件なのでこちらではあまり報道されなかったように思います。

2007年7月25日(水) 、 共同通信社が提供したニュースです。
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「生きていても幸せでない」 2児殺害の母が心境

 広島県福山市で昨年、自閉症の長男(5)と二男(3)を殺したとして殺人罪に問われた無職泉ひろみ被告(35)は25日の広島地裁(奥田哲也裁判長)の公判で被告人質問に答え、「世間では障害者は不幸という見方が強く、生きていても幸せになれないなら一緒に死んだ方がいい」と殺害を決意した心境を話した。
 泉被告によると、二男は知的障害もあり、パニックになると手に負えなかったといい「わたしの養育方法が間違っていたのか」と悩んでいたと説明。一方で「かわいいという気持ちはなくなっていなかった」と言葉を詰まらせた。
 また「夫に助けを求めたが、『おまえの育て方が悪い』と言われた」「自閉症は障害なので薬をのませるものではないのに、母親に『のませろ』と言われ無理解だと思った」と孤立感を深めていった状況を話した。
 奥田裁判長は、弁護側が求めた精神鑑定の実施を決めた。


ひとごととは思えないですね。私も上に二人の子がいなかったら、子ども二人が自閉症でパニックを起こす子だったら、同じことをしたかもしれません。
おまえの育て方が悪い
『(薬を)のませろ
私も同じことを言われました。(薬は夫が強く希望して処方してもらいましたが、二回で飲ませるのをやめてしまってなじられました。お医者さんの話ではとても苦い、ぴりぴりする薬だそうです)
「オレの血筋にはこんな子は居ない。お前の方の血だ」とも言われましたね。
夫のもとを離れて実家に身を寄せたら、実の姉には「母原病」と決め付けられたし、他の姉には「3回も帝王切開をしたからだろう」と言われました。

私の場合、経済的なこと以外身内に頼ることは出来なかったですが、今まで無事にやってこれたのは、こういう子を専門に療育してくれる場があったからです。
上の子たちを幼稚園に預けた経験はあるのに、この子は無理だろうという思い込みがあって(保育園を2日で断られたから)、「えっ、この子を預かってくれるの? 私はいなくていいの?」と感激しました。子どもと離れられる時間が全くなかったら、息抜きも出来ず絶望的な気分になっていたかもしれません。
若いお母さんたちは誘い合ってカラオケに行っていましたが、療育施設の先生はそういう気晴らしを積極的に勧めていました。(親同士仲がいいのは武器になるでしょうから、親睦は大切だと思います)
その後の養護学校でも、母子ともどもよく助けていただいています。

そしてとても大きかったのが、同じような悩みを持つ人たちと出会い、自閉症の団体で一緒に活動したことです。
「離乳食を食べなかった」と人が話すのを聞いて、思わず「うちの子もですよ!」と叫んだことは忘れられません。
いろんな奇異に見える行動のことを「ウチの子もそうだったわね」とアッサリ笑われて驚き、自分が「悲劇の主人公」ではなくて、<よくいる>「障害児の母親」の一人にすぎないことを悟りました。
顧問的な先生をはじめ専門家からは適切なアドバイスをもらって自然と勉強もしましたし、先輩お母さんは小難しいことは言わず、「そういうときはこうしたらいいわよ」と実践的な対処法を教えてくれるので、とーーっても助かりました。
子ども二人が自閉症の人も何人も、中には双子という人もいます。こういう人の体験談を聞くことが出来ていれば、先の母親は子どもを殺すことはなかったと思います。

おまえの育て方が悪い』 と言われた。
「そうそう、みんな言われてるのよね!」と笑い飛ばされ、
『(薬を)のませろ』と言われた。
「アタシも飲ませてみたけど効果なかったよ」「アイスやコーヒー牛乳に混ぜても気がついて飲まないのよね。こういうのは敏感だからしかたないよ」と体験談を聞き、
「なんとか治ったらいいな、薬があるなら(ダメモトで)飲ませてみようって思うよね、普通。無理もないよ」と慰めてもらっていれば、未来に絶望することもなかったと思います。
たとえ身内の中で孤立していても、世界は身内以外のほうが親切だし数も圧倒的に多いのだから、大丈夫。
生きていても幸せでない」 かどうか、先輩お母さんや子どもたちの笑顔を見てから考えてほしいです。



posted by dashi at 23:44| Comment(5) | TrackBack(0) | 自閉症関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Dashiさん、こんにちは。
今でもたまにメディアでは「スキンシップの欠如で子供が親と目を合わさなくなる」などという報道が見られます。そういうケースもあるかもしれませんが、誤解を受けるような報道…複雑な気分です。

子供の病気の多くは、お母さんだけが責められる事が多く、誤解の多い親族の方を呼んで直接説明することも多々あります。
お母さんの仕事は24時間営業。休みなし。うちの実家でお母さん達が来られる場所をオープンしましたが、将来的にはお父さんを呼んで育児セミナーをして、その間にお母さん達にぱーっとパーティーでもやってもらうという隠された夢があります。

私の彼の弟さんも自閉症で、パニックになったりいきなり服を脱ごうとしたりすることがあるのですが、近所の方々はみんな顔見知りで優しく、声をかけたりたまに使い走りを頼んでお駄賃をあげたりしています。お父さんはその子が可愛くて可愛くて、散歩が大好きな子供を(といっても30歳を越えていますが)毎日連れ出して周囲に紹介して回るのだそうです。

私のブログにも機会があったら書きたい、と思っていますが、支援というのは支援法みたいなシステム作りよりも周囲の心の方が大切なんじゃないかな…と感じています。
Posted by Kashin at 2007年09月23日 04:56
こんにちは。
わたしは5年前くらいに うちの長男が なんだか普通じゃない、ということがいわれ始め、
親類、幼稚園、それまでの関係の中では、私の「育て方が悪い」ということでした。(幸い だんなは「そうじゃない」といってくれたので 持っています)
それが、インターネットでは、「光とともに」を薦めてくれた人、質問サイトでは的確なアドヴァイスをいただけたり、経験者のお話を聞けたり。
インターネットがあって(理解のある方、経験者の方がいらっしゃって、そのかたがたとつながりが出来て)よかった!と思う一人です。

こういう子がいるんですよ、生まれつきで薬もないけど、幸せにやってます、という風に生きられたらいいなと思います。うえのKashinさんのお話にでてくる、彼氏さんのお父さまや、ご近所のかたがたのように。

上手くかけませんが、障害があっても、殺されずにすむ、この子がいて幸せだといえる人が増えますように、、、!
Posted by mm at 2007年09月23日 18:47
Kashinさま、mmさま、コメントありがとうございます。いいお話ですね〜。

障害児を温かい環境で育てられる人は、それだけで立派だと思います。配偶者をはじめ身内、周囲に住む人たちとそういう関係を築けたという意味でもエライ…。
この母親も、なんとか生き延びていたらそんな関係を築けたかもしれないのに、と思うと残念です。
大きくなると落ち着くけど、小さいときのジヘイちゃんって(親もわけがわかんないし)大変ですからね、それが二人で身内に味方がいないとなると、そりゃあ悲惨だと思います。実刑にはならないでしょうけどね…。
Posted by dashi at 2007年09月23日 21:50
そうそう、書き忘れましたが、「子どもと親のかかわりが少ないと、眼を合わさなくなり無表情に、、」という内容の本を読んだことがあります。それは、「サイレントベビー」とよぶらしいことで、
私が読んだその本では、「生まれつきの障害である自閉症とは明確に違うものだけど、現れる症状は似てる場合がある、」と書かれていたと思います。
混同する人は多いでしょうね。
サイレントベビーで検索しても、明らかに自閉症と意図的に混同してる記事も見つかります。
Posted by mm at 2007年09月23日 23:43
ありましたねえ、そんな言葉。サイレントベビー。コインロッカーに赤ん坊の死体が捨てられる事件が続いて、村上龍の「コインロッカー・ベイビーズ」が話題になった頃だったかしら。
(読んだけどあまり面白くなかった)
その言葉は使わないまでも、私も同じようなことを言われましたよ、言葉が遅くて視線を合わさないのは母親のかかわり不足だって。とんだヤブだったワ、あはは。
上に二人の姉もいるし、何もかかわるのは母親だけじゃないのにね。母親が悪いことになってます。
若いお母さんの話を聞いてると、みんな同じことで悩むんだな〜って思いますね。情報がこれだけタダで入手できる時代なんだから、積極的にゲットしてほしい(誰かがそれを教えてあげてほしい)ものです。

コメントありがとうございました。
Posted by dashi at 2007年09月24日 20:26
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