2007年07月22日

「悲しい」子

公務員として定年まで福祉畑で働いていた人と、ちょっと話す機会がありました。
その方(女性)が、「悲しいものを見ちゃったのよ」と話してくれたのは、こんな情景です。
ガイドヘルパーさんと思われる女性に付き添われて商店街を歩いていた、見たところ自閉症の小学6年生ぐらいの男の子。
いいお天気の暑い日中で、日差しは厳しかったそうです。その男の子は点々と続く木陰に入るたびに、ごろりと地面に寝ころがってしまう。
人通りもあるところだから、ヘルパーさんはあわてて腕を引っ張って立たせる。その子は次の木陰に駆け込むとまた寝ころがる…。
ごろんとやりたい子ども、立たせようと焦るヘルパーさん。見ようによっては笑える光景だけど、当人たちにとっては泣きたくなるような深刻な事態かもしれません。

「ねっころがると涼しいんでしょうね。でもほかの通行人の邪魔だし、立たせないわけにはいかないわよね」
自閉症の子は(みんなじゃないですが)汗腺の発達が人より遅れているため体温調節が上手くできず、部屋の隅っこで寝ころがって涼んだりするのだそうです。気温の低い場所をよく知っているとか。
ウチの息子も汗をかいて体温を下げるところができなかったので、夏にはよく板間で寝そべっていました。
背中にびっしょりと汗をかくようになったのは、小学部も後半じゃなかったかと思います。やっと汗をかけるようになったんだ、と嬉しく思ったものでした。
暑くなくても寝ころがるのは、結局、その皮膚感覚が心地いいのでしょうね。気持ちが落ち着くのだと思います。

もちろんこの人は、自閉症のそういう特性はよくご存知です。だから切ない二人の姿に「悲しく」なったわけですね。
たぶんその子は木陰がぬかるんでいても汚れていても、おかまいなしに寝ころがるのだと思います。
「それは困りますね、服だって汚れますしね」
「もっと小さな子ならいいかもしれないけど。本人も辛いでしょうね」
ウチの息子もところかまわずごろんと寝ころがるのは、幼児期によくありました。3歳から4歳にかけて北京に暮らしたころは、北京の街中でごろんとやりそうになる度にあわてて引っ張りあげたものでした。
北京はほとんど雨の降らない乾いた気候のところで、ほこりっぽく、道行く人はよく「かっ、ぺっ」と痰を吐いていて、信じられないくらい汚かったのです。(昔の話です。今はきれいになったと思います)

帰国して地下鉄に乗ったら、いったいどこへ行くのかと不安でたまらなかった(と思われる)息子が、通路の真ん中で大の字に寝そべりました。(さいわい電車はがらがらで、歩いている人はいませんでした。)
電車の床はきれいに磨かれていて、ゴミひとつ落ちていない。もちろん痰の乾いたのもこびりついていない光り輝く清潔な床に、涙がこぼれそうなくらい感動しました。
気が狂ったように息子を引っ張りあげなくても、気分が悪くなるような汚さとは無縁。とは言えほっとくわけにはいかないので、穏やかに声をかけて落ち着いて立たせ、背中をはたいてから座席にかけさせました。
「そんなとこに寝ちゃダメ! 汚い!」と金切り声で腕を引っ張られるのと比べたら、息子にとってもどんなによかったかと思います。
この環境で子育てが出来る、と深く安堵したものでした。

「それにしても、そんなにしつこく寝ころがるのは、よほど暑かったんじゃないでしょうか。体温が下がるように、水を飲ませたらよかったかもしれないですね」
と私が言うとうなずいて、「ヘルパーさんがそういうことをわかっているのかどうか」と首をかしげていました。
その子が汗をかけない子だったら、体温があがって涼みたかったのかもしれないと思います。それでも道端でごろんと寝ころがるのは、やめてほしいですよね。
大きくなってからは指導(矯正)も難しいから、「小さいときの教育って大事ですね〜」と話したことでした。
自閉症でも自分で説明できる子ならいいですが、会話が出来ない子ならあわてて制止する前に周囲が、「なぜそういう行動をとるか」、ちょっと考えてあげてほしいですね。全く脈絡のない突飛な、理解しがたい行動ももちろん多いのですが、うまく解決することもたまにはあるので。

posted by dashi at 23:52| Comment(6) | TrackBack(0) | 自閉症関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
うちの子(自閉症あり)も、冷たい場所を良く知ってるので、「猫のようだなあ」と思っていました。
汗の腺の発達、、、といわれると、そうだったのか、、、とうなづきます。

自閉症の子達と遠足に行くと、ごろ寝する子結構居ますね。本人としては苦肉の策でしょうが、わがままに見えたり、のんきに見えたりで、引き剥がされたり しかられたり。
氷水を持ち歩かせるとか(ハンカチを、濡らしてやったり)本人なりの理由を気付いてやれたら、別の方法で満たすことで、寝転がりしなくていいようにもっていければ、、、と思います。
寝転び→引き剥がされる の繰り返しでは、本人とヘルパーさんの信頼関係も出来にくいだろうし、、、
とにかく、黒いTシャツを着せるのをやめようと思いました。高学年用の男のこの服って、結構黒い!黒い服って着てるとさらに暑いんですよね。
Posted by mm at 2007年07月23日 09:10
ウチも紺や黒をよく着てますよ。暑いかも(笑)。
脱水気味のときに初めての発作を起こす例をいくつか聞いているので、水分の補給だけは気をつけています。暑いのもだけど、水分が足りないとだるくなって、寝ころがりたくなったりするような気もしますが…。飲みすぎてもだるいかな。

コメントありがとうございます。
Posted by dashi at 2007年07月24日 00:06
お久しぶりです、かめです

ガイドヘルパーは視覚障害と全身性障害、精神障害で受けましたが、知的障害は受けていません
でも、すごい短時間の講習で、細かいことまでちゃんと習うのかなあ?
と思います

ちょっと考えてみて、と言われても、なかなかそこまで頭が回らないものです
上司の方がヘルパーに十分な情報と介助方法を伝達するしかないのでしょうね
Posted by かめ at 2007年07月24日 01:12
コメントありがとうございます、お忙しそうですね。
自閉症児への対応は難しいと思います、一人ひとり違いますしね。母親だって、そりゃまずいでしょと言いたくなるようなことを、よくやってますよ。
人には預けられない(あとが大変)、と一人で抱え込むお母さんもいますが、無理もないと思います。私も少し前まではそんな感じでした。
適切なアドバイスが出来る、(自閉症の)専門家の養成に力を入れてほしいと思ってます。
Posted by dashi at 2007年07月24日 20:46
ちょっと日にちがたってますが、汗といえば・・と書かせていただきます。
息子も同じく汗臭くないさらっとした自閉症児ですが、今飲ませてる「てんかん」の発作止めの薬が汗が出にくくなる副作用があるそうなんです。
ただでさえ、体温調節が苦手なのに・・。
この夏は日中の外出は避けよう(自分のためにも・・)と思ってます。
寝転がるといえば、うちの子(8歳)は疲れると「ここは座れる」と思える場所(マンションの植え込みとか)を探して座ります。地べたに座らないところは評価してあげてもいいでしょうかね〜??
Posted by gege at 2007年07月25日 15:41
その副作用の話は初めて聞きました。そうですかー、発作のある子は大変ですねー。
やっぱ、汗腺と脳の(自閉症を発症する)働きって関係あるんでしょうね…。
涼しい夕方や夜になってから出かけるのがよさそうですね、親は忙しいですけど。

地べたに座らないのは勿論、寝っころがらないのはとってもエライですよ(笑)。
コメントありがとうございました。
Posted by dashi at 2007年07月25日 17:37
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