2007年04月26日

ベターハーフ(福田みどりさん)

知人が出た結婚式で、こんなスピーチをした人がいたそうです。
「一つの球形の魂を神様が二つに割って人間界に投げ落とした。二つに分かれた魂はそれぞれ別のところで生まれ育ち、やがて分かれたもう一人の自分(ベターハーフ)とめぐり合って一緒になる。
ベターハーフは、割られた瞬間はぴったりくっつく形をしていたけど、出会うころには少しずつお互いに変形している。だから、出会った瞬間はぴったりではない。
二人を合わせたときに出来る隙間や飛び出ている部分を、相手のを削ろうと思わずに、お互いに自分の形をあれこれ修正しながら歩み寄っていくのが理想的。いつか隙間なんてどこにもないくらいぴったりな球形になれるよう、二人で努力してほしい」。
神妙な顔で聞き入る新郎新婦の姿が目に浮かびます。無事ベターハーフを見つけられた人は幸せですね、羨ましい。

「better half」(「自分より良い半身」の意)妻。愛妻。と広辞苑にはありますが(妻限定?)、司馬遼太郎さんにとってのみどり夫人はまさにそんな感じだったかもしれません。
私生活をあまり語らなかった司馬さんですが、奥さんとはぴったりくっついて隙間がない人生(夫人の方が合わせてくれた?)だったように思えます。
司馬遼太郎さんは司馬遷からペンネームを決めたそうで、本名は福田定一。夫人は夫のことを「福田」と呼ぶのは気が進まず(「福田」姓があまり好きでなかったから)、「司馬さん」で通していました。夫人の「福田みどり」は本名です。
司馬さんが亡くなって秘書の仕事からは解放されたものの、司馬遼太郎記念財団の設立に奔走して理事長、自宅そばに建てられた司馬遼太郎記念館の館長を務めています。
(記念館についてはこちらに詳しい記事があります:http://www.president.co.jp/pre/20011203/02.html
月に一度産経新聞に「司馬さんは夢の中」を執筆、ある程度量がまとまったら手を入れて出版したのが2冊目。相変わらず忙しそうです。

みどりさんは結婚後5年で司馬さんの強い要望に応じて退社してからは、国民的人気作家となった夫の窓口になって、殺到する原稿や講演の依頼を見事にさばき続けました。
司馬さんはいわゆる「外面のいい」タイプだったようで、仕事では徹底的にサービスし誰にも優しく接していた。でも実は人間関係には潔癖で、少しでも裏切られたりすると大嫌いになるようなところがあったそうです。みどりさんが嫌われ役に徹して、その人からの依頼は拒絶するような形で補佐されてきたのでしょう。
「司馬さんと一緒に陽気な旅人でいられたら」といつも思っていたそうで、取材旅行などにも同行して「さびしがり」の司馬さんの世話をしていました。ホテルに着くと取材したメモをすぐ記録したがり、みどりさんにあれこれ聞いてくる。それでいて部屋の中がちゃんと片付いているのを期待する。
みどりさんは結婚したばかりの頃、バナナを買って「これをきょうの夕食にしよう」と言って司馬さんをあわてさせたこともあったそうですから、こちらもあまりこだわりのない豪快な人なのかもしれませんね。(家の中では)首尾一貫しない司馬さんの言動を面白がる余裕があったようです。

書店で見かけて初めて買った「ラジオ深夜便」5月号に、「司馬さんとの37年」と題したインタビューが載っていました。
(これは2007年2月15・16日に「ラジオ深夜便」で放送されたものですが、4月末にCDになって発売されるそうです。NHKも商売熱心。リクエストが多いのかな?)
お二人は産経新聞本社(大阪)文化部の同僚として知り合いました。デスクが向かい合っていて、こっそりメモが回ってきて連絡をとっていたそうです。(今ならメールでしょうか)
二人の交際は極秘裏に続いていたようで、結婚は青天の霹靂。ほんの少人数の披露パーティーに、記者仲間だった俵萌子さんは「結婚式と知らずに」出席したとか。
みどりさんは結婚する気なんか全くなかった。仕事は面白かったし、家庭に入るような生き方は考えてなかった(出来ると思わなかった)そうです。

司馬さんにプロポーズされた時の話が面白いです。ごく普通に結婚を求められて
「だめだめだめ。私、精神の機械が壊れてる」
と断った。すると後日また職場でメモがするすると回ってきて
「僕が壊れた機械を直してあげます」
と書いてあったそうです。
しばらくたってからプロポーズを受けることにして
「トラピストというお菓子をあなたと一緒に食べることに決めた」と返事をしたら、
「リアリズム(現実主義)でいきますか、リリシズム(抒情詩風)でいきますか」
と、持っていた手帳に書いて渡してくれたそう。作家らしいエピソードですね。
「そんなことまでばらすのやめなさい!」って、司馬さんが真っ赤になって怒りそう。先立った罰ですね。
posted by dashi at 22:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 気になる人 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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