2006年11月25日

ピア・プレッシャー

いじめによる自殺の連鎖、ついには授業中に、制止する先生を振り切って校舎から飛び降りるという事件まで起こりました。そこまで追いつめられた女の子には同情するとしても、力及ばず目の前で生徒を死なせてしまったその先生は、一生悪夢にうなされるのではないかと気にかかります。
そんなに辛いのに、どうして学校に行くんだ。死ぬくらいならその前に、なんで逃げたりいじめを訴えたりしなかったんだ、今ならいじめと言えば周囲もほっておかないだろうに……と疑問に思いますよね。

きょう読んでいた本(悪魔のささやき・加賀乙彦著・集英社新書)の中に、ヒントになりそうな言葉が出てきました。心理学用語で「ピア・プレッシャー(peer pressure)」というものです。
peerは「(地位・年齢・能力などが)同等の人、同僚、仲間」を指し、ピア・プレッシャーは「仲間からの圧力」と訳されているようです。(そのほかpeerには「じっと見つめる、目をこらす」という意味もあるので、「お互いに監視し合っている圧力」という印象もありますね)
この本では、日本社会は欧米に比べピア・プレッシャーが強く、それに抗する力が弱い。だから誰かが始めたいじめがクラス中に広がったり、新歓コンパのイッキのみで命を落とす若者が絶えない、と指摘されています。
たしかに昔から村八分の伝統のある国ですから、みんなでいじめて自殺に追い込む社会的体質はあるかもしれませんね。

そしてこのピア・プレッシャーは、思春期は特に受けやすい時期だそうです。
http://www.ask.or.jp/lifeskill/columns/colum_05_01.html
その年代では、自分が仲間うちでどう見られているのか、とても気になる。まだ学校に行っている年齢ですから、学校の仲間が社会のすべてになるんでしょうか。
ピア・プレッシャーからのライバル意識がいい方に働いて学業やスポーツなどで高め合う面もありますが、集団いじめや犯罪の誘因になったりもするわけですね。
タバコや飲酒も、友人仲間から教えてもらう(強制される?)場合が多いと思います。

私の身内にあまり治安がよくない地域で育った青年がいます。いわゆる悪ガキの多いところですが、その子はおっとりした優しい性格で、親はその子に全幅の信頼を置いていました。
その子の母親は子供たちが大人になってから「ここらへんでは万引きがとても多いらしいけど、やってた子を知ってる?」と聞いたそうです。すると妹にアッサリと「お兄ちゃんも中学生の頃よくやってたよ」と言われて大ショック。「万引き、上手だったよ」の追い打ちに、夜も眠れないくらい落ち込んだそうです。
比較的裕福な家庭の子で万引きしなくても買う金には困ってなかったはずですが、誘われたら断れなかったんでしょうか。もっともピア・プレッシャーのなせるワザだ、と母親が言うとしたら、親バカというものでしょうね。

ピア・プレッシャーはビジネスの世界でも
「個人よりも集団を優先する」「金銭的報酬よりも同僚の評価を気にする」
日本社会の特徴として注目されているようです。
雇用主からしたら、これはまたずいぶん扱いやすい被雇用者ですね。
終身雇用制が崩れてきた今ではだいぶ事情も変わってきたかもしれません。それでも、同僚に迷惑(負担)をかけるのを何より恐れるからサービス残業を厭わなかったり、有給休暇を消化する労働者が少ない、という体質は残っていると思います。
posted by dashi at 01:14| Comment(0) | TrackBack(1) | 社会問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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