2008年09月05日

癒されたひとこと

引き出しの整理をしていたら、変色した新聞の切り抜きが出てきました。
ちょうど10年前に私が投稿して朝日家庭面に掲載された文章です。出てきたのも何かの縁だと思うので、こちらに再掲いたします。
十歳の頃の息子はおとなしくて、多動などに悩まされることは一切ありませんでした。偏食以外にはそう問題もなく、元気にスクールバスに乗って養護学校に通っていました。
この翌年あたりから服破りが始まり、特定の子を執拗に狙う(たたいたり蹴ろうとする)のでバスポイントを変更したり、学校まで直接送迎するなど、自閉症らしい行動が目立って振り回されたものでした。

日付をメモしてないので何月のものか不明ですが、この年は何年も別居のあと正式に離婚した時期に当たります。親権にこだわった夫にそれはアッサリ譲り、養育は引き続き私がすることにして円満に別れました。
仲のいい夫婦ならお互いに励ましあい慰めあい協力もするのでしょうが、私には学齢期の子ども三人だけ。私一人でちゃんと三人を育てられるのか、娘たちが非行や自殺に走らないか、不安でいっぱいでした。
そういう背景で書いた文章です。
なお、文中のS先生は、佐々木正美先生のことです。それまで先生と個人的に接したことはありませんが、見たことのある顔ぐらいの認識はお持ちだったかもしれません。私は度々先生のお話を聞きに行き、かなり影響を受けました。それだけではなくて、私の直接の恩人でいらしたなあとあらためて感謝しています。


<ひと言に いやされて>
自閉症の権威として知られるS先生の勉強会のあと、レストランで一人でコーヒーを飲んでいらっしゃる先生に思いきって話しかけてみた。
息子の自閉はあまり強くないのですが、と前置きし、「いつしゃべり出そうが、私は、本人の勝手だと思うんです」と言うと、先生は「そうです」。力強いひとことに、思いがけずワッと涙があふれた。
「今まで一度も、そうだねって言ってもらったことがないんです」。やっとの思いで声をふりしぼる私を、S先生は優しく見やり、「本当にそうです。その通りです」。この言葉を、私は長いこと待っていた。涙がとまらなかった。
今十歳の息子が「自閉症です」と宣告されてから五年半。息子の理解しがたい数々の行為の答えが出されたようで、「ああ、そうだったのか……」と力が抜けた。
人並みに泣いたり落ち込んだりもしたけど、一番つらかったのは周囲の言葉だった。家族や親せきは「たたいてしつけろ」「帝王切開が原因だよ」「育て方が悪い」。友人は無邪気に「H君はしゃべるようになった?」と聞く。
しゃべりたくなかったら、しゃべらなくてもいい。しゃべれる方が便利だけれど、しゃべらなくてもコミュニケーションはできるし、本人が楽しく生きていけるならそれでいい。
そう達観できたのはわりと早かった。でも、私の気持ちに共鳴してくれる人には長いことめぐりあえなかった。
たったひとことでいやされることもあるのだ、と改めて思った。
posted by dashi at 22:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 自閉症関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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